
Interview
Performance Notes
Q1.
『As If It Were A Dream』は、現時点でのGADEを象徴するような作品にも感じます。まず、この曲はどんなところから生まれたのでしょうか。タイトルに込めた意味も含めて教えてください。
A.
この曲は、生まれて初めて夢の中で作った曲です。
ちょうどワンマンライブの準備に追われていた頃で、思うようにいかないことが重なって、ひどく落ち込んでいた時期がありました。
食事も喉を通らず、寝ても寝た気がせず、毎日が虚無でした。
そんなある日、深い海の底へゆっくり沈んでいく夢を見たんです。
僕はそれをただ受け入れることしかできなかったんですが、水面から差し込む光を見上げて、「まだ生きたい」と思いました。
すると場面が変わって、暗い部屋で寝ているんです。
やがて遠くから足音が聞こえてきて、咄嗟に身を隠したんですが、その人物は母親で、「下に家族が来てるよ」と伝えるんです。
部屋を出て階段を降りると、何も心配していない家族が、光の差す部屋でいつも通りの日常を過ごしていました。
夢はそこで終わるんですが、その夢の中でずっと流れていたBGMが、この曲でした。
起きても不思議と覚えていたので、すぐに楽譜へメモを取って制作を始めました。
後からこの夢の話をすると、「このままじゃ良くないと自分でも分かっている。でも、自分の力ではどうすることもできない状況。それでも最後には本当に大切なものが見えてくる。そんなワンマンライブまでの心境を表していたんじゃないか」と言われたことがあります。
このインタビューを受けている時点では、まだワンマンライブがどうなっているか分かりません。
でも、本当にここまで自分の全部を出し切ってきたので、その先で何か新しいものに出会えていたら嬉しいですね。
Q2.
夢の中で流れていた音楽を、そのまま現実の作品にするというのは、とても珍しい体験だったと思います。実際に制作する中で、「夢の中で聴いた音」と「現実の楽曲」とでは、違いはありましたか。それとも、驚くほどそのまま再現できたのでしょうか。
A.
デモの段階では、夢の中で鳴っていた音を、とにかく忘れないうちに殴り書きしたような状態でMassさんに渡しました。
なので、アレンジのアプローチは結構変わっています。
例えば、この曲はAメロもBメロもメロディがまったく同じなんです。後ろにつけてるコードを変えることで世界観が歪んでいくのを表現してるんですが、そういう観点からhiphop的にいうとメロディというよりはループしてるリフになるのかな。ちょっと珍しい作り方をしています。
最初はそのメロディをピアノで弾いていたんですが、「メロディはヴァイオリンに任せて、ピアノは3連系のリフにしよう」という話になりました。
たしかAlicia Keysの『If I Ain’t Got You』だったと思うんですが、「ああいうリフを入れたら面白いんじゃないか」というMassさんのアイデアもあって、そこからいろいろと形を変えていきました。
あと、最初はアルトフルートを想定して作っていたんですよ。
アルトフルートって、冷たい質感があって好きなんです。高音域の楽器なのに、実際には低い音域が出る。その矛盾したサウンドがすごく魅力的で。
最終的には、「今のGADEのポートフォリオを作る」という意味もあってヴァイオリンになりましたが、いつかアルトフルート版も作ってみたいですね。
Q3.
この曲を聴くときに、「ここだけは意識して聴いてほしい」というポイントはありますか。
A.
Lo-Fi Hip Hopでは、Foleyと呼ばれる環境音を楽曲に取り入れることが多いんですが、この曲にも海の底へ沈んでいくような音が、うっすら入っています。
ぜひ、どこで鳴っているのか探してみてください。
Q4.
最後に、『As If It Were A Dream』をこれから聴く方へメッセージをお願いします。
A.
Trip Hopと呼ばれるジャンルがあるんですが、今回の作品はそれに近いかなと思っています。
劇伴音楽のようなエピックさや、アンビエント的な音楽がHip Hopのビートに乗っているようなスタイルで、これは劇伴作曲家として活動してきた自分だからこそできる表現なのかなと思います。
一見すると叙情的な作品に聴こえるかもしれませんが、この曲で表現したかったのは、生きる勇気や、「生きたい」という人間の本能です。
悩んでいることや苦しんでいることが、少しずつ解放されていくような。
この曲を聴いて、そんな前向きな気持ちになってもらえたら嬉しいですね。
Q.
もし『As If It Were A Dream』を演奏するなら、最初に意識してほしいことはありますか。
譜面に書いてある音やリズムだけでは伝わらない、この曲ならではの演奏のポイントがあれば教えてください。
冒頭(0:00-)
冒頭のヴァイオリンは、デジタルで1オクターブ下げています。ビオラなら原音で演奏できるはずです。
全体を通して、ヴァイオリンは音を滑らかにつなぐことが大事です。ポルタメントをたっぷり使って歌ってください。
ドラムはかなりEpicな方向性ですね。Massさんは「花火の音」をイメージしていたそうです。なので壮大に。
オブリガート(0:32-)
00:32から出てくるヴァイオリンのオブリフレーズは、
「ステージの端で、スポットライトを浴びながら一人で悲しげに弾いている」
そんな姿を想像しながら弾いてください、とディレクションしました。
譜面にもperdendosi(だんだん弱く、小さく または 消え入るように、命絶えるように)と書いてあります。
メロディはポルタメントが多いので、その対比も面白いところですね。
ピアノ(0:42-)
ここは3連ですね。
Alicia Keysを思い出しながら、機械のように弾いてください。(笑)
まだここでは主役ではありません。
ピアノソロ(1:23-)
ここからはピアノがメロディになります。
ベースとメロディのオクターブがかなり離れているので、結構忙しいです。
まあ……気合です。(笑)
坂本龍一さんも、こういうボイシングをよく使いますね。
そのボイシングをヴァイオリンのスタッカートで重ねていますが、これは付点8分のDelayがかかることで成立するサウンドです。
U2のThe Edgeがよく使う手法ですね。
僕はLUNA SEAのSUGIZOが好きだったんですが、彼もよく使っています。
『IN SILENCE』のイントロなんか、まさにそんな感じです。
僕はさらに、付点8分のテープエコーに2分Delayを重ねた二段掛けにしています。
これは『関ジャム』でSUGIZO本人が話していたのを見て取り入れました。(笑)
子どもの頃に聴いていたロックのサウンドスケープが、この曲には結構入っています。
他には嵐の「Oh Yeah!」のイントロとか、神様、僕は気づいてしまったの「CQCQ」のイントロとかthe GazettEの「Nausea & Shudder」のサビとかとにかく色んなJ-Popでも使われてます。
キタニタツヤとか斉藤和義とか、めっちゃあるので「あ、あれだ!」って聴いてみてください。
鳥の鳴き声(1:43-)
ここ、鳥の鳴き声みたいに聴こえませんか。
実はFoleyではなくてヴァイオリンなんです。
E→C#をフラジオレットでポルタメントして、そこへさっきのDelayをかけています。
お醤油をかけて煮る、みたいな。
料理みたいですね。(笑)
ストリングス(1:49- / 3:31-)
ここからストリングスが重なります。
3:31ではさらにオクターブ上も追加しています。
レコーディングは3-2-2-1編成なので、
ここは2倍の16人分に加えて、
メロディ、ハモリ、オブリガートが入るので、合計19人分になります。
デジタルでオクターブを重ねることで、2度がぶつかるような響きになるんですが、その偶発性が結構好きなんです。偶生和音とかクラシックではいいますね。
普通に譜面を書いていたら思いつかないような響きですね。
時計(2:47-)
ピッチカートは時間の流れを表しています。
時計の秒針みたいなイメージなので、「チクタク」と言いながら8分音符を刻んでください。
ここも付点8分Delayがかかることで、弾くたびに層がずれて重なっていきます。
時間や時空が少し歪んでいくような感覚を表現しています。
全体を通して、ヴァイオリンのサウンドスケープを楽しんでもらえたら嬉しいです。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
普段は音だけで完結することが多い音楽ですが、今回は「なぜこの曲が生まれたのか」「どういうことを考えながら作っているのか」を、少しだけ言葉にしてみました。
正解はありません。
このCommentary Accessを読んでから聴く人も、読まずに自由に聴く人もいていいと思っています。
もしあなたなりの解釈や感想が生まれたら、ぜひ教えてください。
また次の作品で、お会いしましょう。
Yoshitake Wada