All Things Must Pass

Interview

Performance Notes


Interview

Q1.
『Anniversary』ではGADEの始まりについて伺いましたが、『All Things Must Pass』は前作とは少し雰囲気が変わったようにも感じます。まず、この曲を制作しようと思ったきっかけを教えてください。

A.
これは最初のBlues Alleyでやったワンマンライブの、2週間後くらいに作った曲ですね。

活動体制の変更もあったので、リリース自体は予定よりかなり遅くなりましたが、曲としてはワンマンライブの記憶が残っているうちに作った作品です。

「次のGADEはこれでいこう」という指針を出したかったんですよね。

『Anniversary』のクラシカルな要素は残しつつ、Nujabes的なLo-Fi Hip HopやJazzy Hip Hopの要素を取り入れて、今のGADEの方向性に近づいた一曲になったと思います。

Q2.
この作品で「次のGADEはこれでいこう」という方向性が見えたとのことですが、具体的に何を変えようと思ったのでしょうか。

A.
GADEがもともと持っていたクラシカルな要素と、DJカルチャーを横断するような音楽性にしたいと思いました。

構成も大きく変わりましたね。

『Anniversary』はAメロ、Bメロ、サビというJ-Pop的な展開でしたが、この曲はどちらかというとループを軸にした構成です。

Verse、Hookという形に近いと思います。

Q3.
「DJカルチャーを横断するような音楽性」という言葉が印象的でした。和田さんにとって、その要素はどのように取り入れていったのでしょうか。

A.
これはどっちかというと、Massさんの影響が大きいですね。

この曲は、原曲の段階からMassさんが入った最初の作品なんです。

Massさんはサウンドプロデューサーなので、そのあたりの考え方は、いつか本人に話してもらった方がいいと思います。(笑)

Q4.
この曲を作曲するうえで、一番時間をかけた部分はどこでしたか。

A.
メロディの入りと、曲のど頭のリフですね。

しっかり熟考したのは、この数秒間だけです。

今は簡単にスワイプできる時代なので、開始2秒で興味を引いて、開始10秒で「この曲いいな」と思ってもらわないといけない。

だから、『Anniversary』みたいな長いイントロはやめて、伝えたいことを最初に持ってくる形にしました。

逆に、Hookのところなんかは、ほとんど手癖で作っています。

Q5.
楽曲のアイデアは、普段どんなときに生まれることが多いですか。

A.
昔から、曲のアイデアは普段何気なく生きている一瞬から湧いてきます。

本当に些細なことなんです。例えば、人混みで信号待ちをしている時とか、サウナに行ってくつろいでいる時とか。

20代前半の頃は、強く感情が動いた時が多かったですね。友達と喧嘩したとか、理不尽な対応をされて悲しかったとか、社会に対するアンチテーゼとか。

最近は少し変わってきて、誰にでもあるような当たり前の一瞬が、「これって当たり前じゃないんだな」と感じる瞬間があるんです。

そういう時に、アイデアが出てくることが多いですね。

Q6.
最後に、この曲にはどんな情景が描かれているのでしょうか。

A.
この曲は、さっき話した「何気ない一瞬」から生まれた曲です。

渋谷のスクランブル交差点で信号待ちをしていた時だったかな。

サラリーマンもいれば、若者もいるし、海外からの観光客もいる。いろんな人が、それぞれ違う表情で、それぞれの人生の一ページを生きているんですよね。

これから遊びに行く人もいれば、仕事終わりで疲れている人もいる。

いろんなドラマが交差している場所だけど、その人の頭の中までは見えない。

僕からすれば、いろんな人間の感情が、ただ通り過ぎていくだけなんです。

そんな様子を描いた曲ですね。

曲の冒頭で僕が弾いているリフが僕自身だとするなら、ヴァイオリンのメロディは渋谷の街そのものです。

間奏でヴァイオリンにノイズが入るんですが、あれは周りを通り過ぎていく人たちの雑踏を表しています。

ヴァイオリンのメロディはずっと同じなんですけど、少しずつ印象が変わっていく。それは、渋谷という街自体は変わらなくても、その街に対する僕の印象が少しずつ変わっていく様子を表しています。

そんな物語です。

みなさんはどう感じるでしょうか。

ぜひ感想も聞かせてください。

Performance Notes

Q.
もし『All Things Must Pass』を演奏するなら、最初に意識してほしいことはありますか。

A.
まず冒頭のリフ(0:00-)ですね。

前打音で入るんですが、この細かい間って楽譜では表しきれない部分なので、4回とも同じ間で弾くのが意外と難しいです。(笑)

この曲は4/4拍子なんですけど、どこか12/8拍子で聴こえるような3連のフレーズが多いですね。

例えば0:12からのメインメロディも、休符込みのアウフタクトなので、結構狙って演奏しないとハマりません。

レコーディングでは、「あのね」って歌詞が付いていると思って弾いてくださいってディレクションしました。

そうすると、リズムを狙いすぎなくても自然なニュアンスになるんです。

インストでも、音符に自分なりの歌詞を付けてみるのは面白いですよ。

僕は「あのね」でしたけど、人によっては「あした」かもしれないし、「もっと」かもしれない。

話は逸れますけど、昔ずっと5連符が続く曲を書いた時に、ギターのメンバーがリハで「いけぶくろ、いけぶくろ、いけぶくろ……」って言いながら弾いてたんです。

当時は「何してんだこいつ…」って思ってましたけど、今ならその気持ちが分かります。(笑)

0:34からのピアノは、虚無でずっと同じフレーズを弾き続けてください。

逆に、ヴァイオリンは人々の雑踏タイムなので、うるさく。(笑)

01:27からのピアノソロは、一つの大きな展開というより、フレーズが5度ずつ変わって組み合わさるフーガみたいなイメージから連想して作りました。厳密にはフーガではないんですが。

なので、一つひとつディミニエンドしながら弾いていました。

02:21のヴァイオリンは、譜面ではトリルで書いていますが、僕はこの形が好きですね。(譜例参照)

とはいえ、ここは個性が出るところなので、それぞれの解釈でいいと思います。

最後の03:06では、ヴァイオリンは**sul pont.**で弾いています。

弓を当てる位置を駒寄りに変えることで、ああいう硬い音になります。

ここも街の音を表しているので、歌心は逆に出さない方が、この曲の雰囲気には合うと思います。


ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

普段は音だけで完結することが多い音楽ですが、今回は「なぜこの曲が生まれたのか」「どういうことを考えながら作っているのか」を、少しだけ言葉にしてみました。

正解はありません。

このCommentary Accessを読んでから聴く人も、読まずに自由に聴く人もいていいと思っています。

もしあなたなりの解釈や感想が生まれたら、ぜひ教えてください。

また次の作品で、お会いしましょう。

Yoshitake Wada